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『オリンピック』にも有料テレビの風

国際オリンピック委員会(IOC)は、10月下旬、2014年ソチ冬季(ロシア)と16年夏季両オリンピックのイタリア国内放送権を同国の有料テレビ、スカイ・イタリアに与えることを決め、発表した。契約額は明らかにされていない。

スカイ・イタリアは、すでに今年2月、2010年バンクーバー冬季(カナダ)と12年ロンドンの放送権を得ている。

有料テレビ系との本契約をつとめて避けてきたIOC、それを良しとしてきた世界のテレビ界。いずれは崩れるにせよ、こうも早く、しかも綻(ほころ)びがテレビ界からのぞくとは考えにくかった。

予兆はあった。4年前の夏、10年と12年のパッケージを、ヨーロッパ放送連合(EBU)とIOCが合意(契約料は推定で8億4000万ドル)した時、EBUの獲得した放送権には「イタリアを除く」とのただし書が付いていたのだ。

EBUの主軸のひとつであり、伝統の公共放送、イタリア放送協会(RAI)が、EBU内での分担金額をめぐって折り合いがつかずIOCと個別交渉することを、EBUもIOCも了承していた。

私の知る限り、IOCとEBUの結びつきは揺ぎないものがあり、10年・12年パッケージでも、EBUの提示額を上廻るヨーロッパ圏内の有料テレビ勢が顔を見せながら、IOCは「多くの国でオリンピック放送が無料で保証される」とEBUを選んでいる。

そのつながりのなかで、RAIがEBUを支えられなかったのは、時の流れというよりも、新しい風の強さを印象づけるものだった。EBUの枠から離れたことで、イタリアのオリンピック放送がRAIによって手がけられる歴史も閉じられる。

テレビとオリンピックの本格的な出会いとなった1960年夏季ローマ大会のホストブロードキャスターの主力はRAIがつとめた。

衛星が打ち上げられていない当時、RAIの“作品”はビデオテープに収まり空輸されて日本に着いた。

新聞よりも遅い情報だったが、テープにはそれまで見たことのない“世界のスポーツ”が詰まっていた。

RAIのカメラワークにもうならされた思い出がある。そのRAIが、である。

14年・16年のパッケージは、今回の発表以外、世界テレビ界のいずれともIOCは合意の発表を行っていない。スカイ・イタリアは、トップを切って手を打ったのだ。EBUとともに旧態への“復元”を探っていたRAIがIOCに抗議したとの情報はあるが、EBUの動きは、まだ伝わってこない(11月14日現在)。

IOCは、大会期間中、地上波で最少でも200時間の無料放送を望み(冬季は100時間)、有料放送などへの制限は、かなり緩やかにしている。スカイ・イタリアはインターネット権、携帯電話への配信権も握っている。無料放送については、スカイ・イタリアの出方に注目が集まることになる。

金融危機に見舞われて、このあとのオリンピック放送権の展開は、予断を許さぬが、スカイ・イタリアを率いるのが、メディア王、ルパート・マードック氏だというのも、波乱を予想させるのに充分だ。

アメリカでは同氏のFOXが、IOCへの入札への“常連”となっているし、スカイ・イタリアの“成功”をスプリングボードにEBUとヨーロッパ圏の権利をわたり合うのでは、との“噂”も現実味をおびてきた。すでにいくつかの動きが伝えられてもいる。

IOCは、かねてからEBUやジャパンコンソーシアム(JC)と“一括契約”するよりも国別、個別に契約を結ぶことを求め、これまでにもさまざまな揺さぶりに似た策を仕掛けてきた。

北京オリンピックまで「韓国アソシエーション(KA)」でまとまってきた韓国テレビ界は、2年前に10年・12年パッケージをSBSインターナショナルが“単独”で取得し、14年・16年の契約交渉も第1優先権を持つ、とされる。

日本は、2016年の開催地に東京都が名乗りをあげ、来年10月に開かれるIOC総会の結果(投票)を待っている事情がからむ。

大きな変化は起るまいが、「オリンピック放送」がいつまでも同じ状況で進むとは、言い切れなくなった。

別の面でも、今回のなりゆきは興味深い。あらゆるスポーツを通じて有料テレビの視聴者(=契約者)の知識は深く、目は肥えている。サッカーにつづいてオリンピックも、そうしたムードに包まれる時代となるのだろうか。

スーパーイベントの制作にかけられるプロダクションの力への期待は、いっそうふくらむことになる。

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